Idioteque



プリンセスとしての尊厳はおろか
人間としての自覚すら放棄し
イステハイネは
自ら堕ちることを選んだ

苦痛と絶望から逃れる唯一の術は
自分を捨て考えることを捨て
肉となる意外に無かったのである

一度壊れれば後は簡単に転がっていく
どんなに恥ずかしい行為も
畜生にも劣る扱いにも
喜びさえ見い出して悦楽を貪った

嬲りものになりながら
じっくり受精した少女の肉体は
やがて母親のそれへと変容していく
下腹部に痼りが出来てからすぐ
つわりと目眩に苛まれ発熱が続いた
半年も経たずに十月十日ほどの腹となり
母乳が溢れ小刻みな陣痛に襲われるようになる

いったい私は何を孕んだのか?
イステハイネは一瞬でもそんな理性が戻るのを怖れ
賢明にイディオテック(白痴)へ向かおうとする
胎児は目覚めると子宮壁に身をくねりつけて
膨張した腹はもこもこと動き
そのたびイステハイネは悲鳴を上げた
中からかすかに鳴声さえ聞こえてる

そんな彼女にさえカリエランテは容赦しない
今日も地獄の宴が始まるのだった

 

第六話 胎動









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