さかあがりの森

つまり世界はまるで何事もなく動いていて、

強いて言うならメディアが数字欲しさに騒ぐくらい、

そのくらいのレベルの揺らぎしかなくて…

柚木 詩音(ゆずき しおん)は諦めてさえいた。

この世界で彼女が存在している理由が

まるで見当たらなくて…。

自分がいったいなぜ差別の対象となってしまったのか。

詩音自身わからない。

ただ、たぶん自分が悪い…

そう漠然と考えていた。

絶望したこともあったし、

自殺も考えたけれど、

せめて、

せめて一度でかまわないから、

誰かに必要とされたかった。

それが、

何であろうとかまわないから…

 

 

第一話「透明少女」

 
















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