少なくとも、そこは天国ではなかった。
早坂は、幸か不幸か生きていたが、それは同時に
狂気に満ちた絶望の始まりに他ならない。
気がついた早坂の視界に入ったもの、
それは只管に 『黒い世界』だった。
ざわざわと床や壁が動いている。
無数の触手が這いつくばって体液を蒔き散らす。
嘆きにも似た虫の鳴き声は反響して、
巨人の息のような生暖かい湯気が渦巻く。
霧もように曇った空間は、さながら生物の
体内のようでもあり、背筋が凍るようだ。
早坂は立ち上がろうとするが、
足がガクガクとわななき、思うように動かない。
ほんの5〜6メートル先くらいまでしか
確かめられない世界。羊水のようなヌルついた
液体が小指の深さはど床を覆い、その下に
網張った触手の肉感が一層、早坂をおぞけさせた。
「ここは…どこなの? すみれ…二階堂さん…」
四つン這いでおっかなびっくり進むと、
肌の感覚が敏感になっていることに気付く。
もはや全裸になっている少女の躰は、警戒を通り越し、
何か準備をしているようにさえ思えた。
光りが見える。雲間から一筋の救いが
差し込むかのような幻想的シチュエーション。
無意識に光りの指す先へ這い進む。
乳首が勃っている。あそこも濡れてるし、
汗も流れ、息も乱れていた。
早坂は欲情していた。
甘い香りの充満する肉の熱帯雨林に放置され、
敏感な『雌』の本能が少女の純潔を脱ぎさり
子種を欲しているようだった。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
おぞましい感覚だ。
こんなに自分を嫌悪したことはない。
早坂は淡い花びらから蜜を垂らして期待する。
早坂は…犯されたくてたまらなかった。
「ヤダ、やだよこんなの…」
涙が頬を伝う。幼い肉体を支配する渇きに
必死で抗う姿はひたすらに健気で、哀れだった。
正気を保とうと恋人の顔を
思い出そうとするが上手くいかない。
替わりにあのグロテスクな虫共が鮮明に脳裏に蘇る。
光りの下は少し床が盛り上がっっていて、
一見、なにかの祭壇のようだ。
光りは上の穴から指していた。
こうして見ると、ここが何処なのか理解できる。
インカローズ…その中に連れて来られたのだ。
「誰か…たすけて…私…おかしくなる…」
この奈落の空気に当たり粘液に触れて、
早坂は彼等への貢ぎ物として出来上がっていた。
「ママぁ…すみれぇ…」
泣きながらも、その指先はたどたどしく自らの
恥部を弄り、人生で最も不愉快なオナニーを始める。
かすかに残った理性の視界の中で、
ぞろぞろと近付く怪物たちを確認。
その数は5匹、6匹、まだ増える。
スポットライトのような光りの下に浮かぶ
うずいて堪らない少女を取り囲み、
肉虫たちはがちがちに生殖器をいきり勃たせ躙り寄る。
早坂と彼等との、あまりの次元の違いに
現実味はまるで感じられない。
幼く無垢な天使が、知らずのうち
地獄へ落ちてしまったような、そんなお伽の世界だ。
「来ないで…お願い…」
心は絶対に拒否してるのに、
肉体が受け入れたがっている。
彼等とセックスしたら、寄生妊娠させられる。
まぎれはない。100%胎児を打ち込まれるのだ。
ぶるぶる震え、意識は粉々になりそうだ。
「あ、、も、もう、、だめ、、、」
早坂は祭壇の上に腰を置いて仰向けに寝そべると
両足を開いた。