塩っぱい海水の混ざった粘り気の強い水中を
波の動きに合わせて頭を出したり引っ込めたり
恐怖と絶望に対してもがきもせず脱力する西川の
股を開かせた怪虫は生殖器をその淡い小さな
つぼみへ押し当てる。発展途上の躰が反応した。
西川は処女だった。
緊張して閉ったそこにはなかなかうまく挿さらない。
ぬるっ、つるっと滑って慌てるペニスを虚ろに眺め、
西川は心中既に悲鳴を上げてはいない。
「(…葵ちゃんも体験したことなら…私も体験しよう…
あの時葵ちゃんを救えなかったのだから…せめて
同じ仕打ちを味わってから葵ちゃんに会いたい…)」
そんなことを朦朧と思っていた。
西川にとって早坂は特別だった。
出会ったのは児童図書館で、一緒に絵本を読んでくれて以来、
生まれて始めて感じる感情にときめいたのを西川は今でも忘れない。
引っ込み思案で泣き虫で、よく虐められたりもしたけれど、
早坂はいつもそんな西川を優しく慰めてくれた。
早坂が大好きでいつも側にくっついてまわる。
ある時、早坂に彼氏が出来て会う時間が減った時、
心底寂しくって不安になって、あぁ、これは恋かもしれない
なんて冗談にも思ったことがある。でも…あの時。
早坂が排気口に挟まれた時、西川は駆け付けなかった。
二階堂が駆け付けたのに、彼女は動けなかったのだ。
瑪瑙が扉を閉めたときだって、たとえ一人の力で開く
扉でないと分かっていても、その努力さえ怠っていた。
結局…自分が助かりたかったのだ。
自分が助かりたくて…いつも早坂の側にいたのだ。
「葵ちゃん…」
海水に何度洗われても涙は止まらなかった。
自分はこんなに卑怯で愚劣で浅ましい人間だったのか…。
異物が無理矢理に侵入する。
処女喪失の鋭い痛みが体の芯を貫き、カッと咳きをした。
始めて受け入れさせられた異性を力いっぱい握り潰す
勢いで締め上げ、何も知らなかった子宮が恐怖で畏縮する。
「あ、、お、いちゃ、、許し、、、て、、」
懺悔。自らに罰を与え贖罪の念を鮮やかにしようと
あまんじて虫からの幼精受胎を受け入れようと構える西川。
童顔で幼児体形の彼女にはあまりに痛々しい様だ。
「(もし、もう一度葵ちゃんに会えるなら…)」
西川は目を閉じた。