「いってきま〜す」
早坂は小走りに玄関先の柵から覗く西川の所へ。
「葵ちゃんおはよ〜」
「おはよ、すみれ」
早朝、雲ひとつない青空の下、並んでバス停に向かう。
「葵ちゃん荷物少ないね、着替えちゃんと入れた?」
「いれてるよ! 私はお土産用スペースを確保してるの」
高校最後の修学旅行。とりとめのない会話。
「お母さんちゃんとビデオ録ってくれるかなぁ」
「予約モード使えばいいのに」
「だってよくわかんないんだもん」
「まぁ、すみれは苦手だもんね〜、機械とか」
「いいもん、電気屋さんにはならないから」
「だいたい見てるじゃん、魔女の宅急便…」
「また見るの!」
タイミング良くバスが丁度来たところだ。
ふたりは乗り込んで、顔を見合わせると
何の気なしに笑いあった。その時。
「…あ!」
「どうしたの葵ちゃん、忘れもの?」
「熱帯魚に餌あげてなかった」
-END-