17.旅立ち

最後の記憶はそう、姫子の悲しそうな笑顔だ。
最後まで彼等を拒み続け心を壊されていく私への諦め。

「時期が来たよ、もう行かなきゃ・・・」

目が覚めると、もうそこには姫子も麗香も虫達もいなかった。

「私たちは、きっと戻って来るよ」

そう言い残して・・・。

甲板へ出ると青空が広がって潮風が体を撫でる。
澪は急に自分の内側も外側も一人しかない孤独感に苛まれた。
唐突に悪夢から解放されたようだったが、安心も歓喜もない。
ただ寂しさでいっぱいなだけ。

ふと海の上に目をやると、そこには一匹の蝶が飛んでいた。
いや、そんなはずはない、きっと波に映る光の反射か何かであろう。
しばらく眺めていると、久しぶりにお腹が減っていることに気づいた。

                    おわり

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