5.水泡の怪人

残酷なのはレイプされている時だけではない、むしろされてからだ。
今与えられたこの時間が私の混乱を沈めて、冷静な判断が出来るようにする。
それはもうひとつの地獄の始まりでもあった。
なぜ私はここにいるの? 何のために連れてこられたの?
こんなことをして、S.E.L.に何か特がある?
どうして? 両親の捜索で私が訴えるのを恐れたから?
それなら 殺したほうが手っ取り早いはず・・・
この森は常に薄暗く濃い霧が漂い、昼と夜との差もほとんど分らない。
腕時計も体を洗った時になくしてしまった。
たぶんここへ来て2日か3日。もう時間の感覚は麻痺してしまった。
何処を歩いているかも分らない。進んでいるのか、同じ場所を廻っているのか。
聞いたこともないような奇妙な鳴き声があちこちから響いてる。
鳥なのか、虫なのか、彼等なのか・・・
蔓の巻き付いた気味の悪い木々は、この樹海が人の手で弄られたことのない証し。
苔やシダ系の植物たちもいたるところで大繁殖している。
ガジュマルのような木の根で地表は血管のようにボコボコと膨れ上がり、
緑に変色した無数の巨大な溶岩石が行く手を阻んでいた。
私は石の上で丸まったまま目を瞑る。
「おなか、減ったな、、、」
ここへ来てからは水しか飲んでない。
「あれ、、食べられるかな?」
大分昔に朽ちたであろう巨木の向こうにビッシリとキノコのようなものが生えている。
よく見るとひとつひとつが目口手足のないカエルのようで、
その大小様々な塊が先っちょの皮を剥いて縦に開いた穴を出しパクパクさせていた。
この石の下には地面があるのだが、ここ数時間歩いてきてずっとそこらへんは、
踝のあたりまで生温い水が張っている。そこにも10センチほどもあるオタマジャクシや、
異様に体の長いナメクジなどが生息しており、どれも食べられるような物ではなかった。
あまりに長時間、苦痛と恐怖と疲労と空腹に駆られ、精神状態もひどく衰退し、
もう何も考えたくはなかった。ただ静かに・・・消えてしまいたい。
"ゴポ・・・"
聴こえた。湧き上がる不快感。
視界の外にある沼から何かが這い上がってくる・・・
確かめるまでもない、彼等だ。
それは私の予想していた形態をはるかに凌駕しておぞましかった。
下半身と左腕だけは人間に近いスタイルをしていて、山吹色のヌメッた皮膚の上の
いたるところにエラが並んでいる。指はイカの足のように長く片手に7〜8本携え、
所々水泡が浮いていた。そして上半身と右腕が信じられないことに、
その楕円球状の水泡が湧き上がるようにボコボコとかたまっており、
頭と呼べそうなものは皆無。水泡は半透明で、そのひとつひとつの中心に
赤いキクラゲのようなものが見える。さらにその水泡のいくつかが
割れてドロドロと中にあった体液を痛々しく垂れ流していた。
「あ、、、あ、あわわ、、」
あまりの姿に言葉も見つからない私の瞳に彼の真っ赤な男根が映り込んでいる。
"づぷ・・・ぢゅぷぷっ!"
「ひ、、ひあ、あ゛あぁっ!」
力の入らない体を無理矢理ジタバタするが、彼との結び目はほどけない。
"づくん! づくん! づくん!"
「あ! あ! ひ! ひぃん!」
彼がどうしてこのような姿なのか? 元々こうなのか?
それとも、もしかしたら何かのウィルスでこうなってしまったとしたら・・・
性交によって感染してしまうかもしれない!
「い、、いやぁぁっ!」
私のこぶしが彼を打つと水泡のひとつが破けて顔面に粘液が降り注ぐ。
「ひ、ひ、ひぃぃぃっ!」
突き上げるような腰のスライドが、この女の身体の全てを刺激するショックを与える。
「あ! あ! あ! あは! あははっ!」
発狂しそうだ。 怪物に犯されて、輪姦されて、孕まされて、病気まで伝染らされて・・・
「ひゃはっ! あ! あ! あ゛あぁあっ!」
恐怖、恥辱、嫌悪、苦痛、絶望、・・・その先に・・・何?
何か来る・・・私の身体の底から何かが・・・沸き上がってくるっ!
「だ、、あ゛っ!あ、、だめっ! も、うあ! ん! はっぁ!」
私が・・・私でなくなる・・・もう押さえられない!
「あああああああああっ!!」
"ゴビュンッ!!"
何もかも吹き飛ばす強烈な衝撃が私を貫いた。
最も奥深い場所に沸騰する濃厚な濁液がおびただしく噴出して、
か細い意識を削り取っていく。
「あ゛--------------・・・・」
ビクンッ!ビクンッ!と紅潮した肢体を感じさせながら頭の芯がジンジン痛む。
彼のおちんちんは最後の一匹まで送りだそうと、まだ膣内でビクついていた。
「・・・・・・・」
徐々に乱れた呼吸もおさり、2人はジットリと合体したまま、時が微睡んでいくのを感じる。
私に何が起きたの?
今まで味わった感覚以外の何か・・・
私、きっとどうかしちゃったんだ・・・
その時私は、またヘラヘラと笑っていた。

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