何かが来る気がする・・・。
ほのかは走り出した。彼等の情欲とは違う、
憎しみにも似た感覚を察知した・・・うまく
説明はできないが、たぶんそんな気がするのだ。
ふとあのイグアナ人間のことを思い出す。
唯一生き残った若く力のある彼が、私を殺しに
追ってきているのかもしれない・・・。
私は狭い横穴へ逃げ込んだ。そこは棺桶を
3つ重ねた程度のスペースしかない。
呼吸を落ち着けようと 仰向けに寝そべってギョッとした。
天井にびっしりとぶら下がる奇妙な球状の物体・・・
それはラグビーボールくらいはあるだろうか。
楕円形をして、大きさはまちまち、少なくても20個は生えている。
ヌルヌルした液体を私の上に垂らしながら、ときおり
ぶるぶると躍動。表面が透き通っていて、中に詰まった臓器が
見てとれる。この島に生息する生き物は、どれもこれも
グロテスクなものばかりだったが、これは少し違っていた。
「卵・・・それとも繭?・・・とっても綺麗」
入り口から差し込む少ない光量に照らされて光っているそれに、
私は少しの間、魅入っていた。体が火照って子宮がズキンッと
疼きだす。息が上がり・・・急にHな気持ちになった私は
たまらなくなって自慰行為を始めた。
白く細い指でたどたどしく桜色の蕾を刺激する。
思わず切ない嗚咽が漏れて全身をくねらせた。
寝そべったままゆっくりと首を伸ばして、球体のひとつを
舌ですくうように嘗めると、ぶるるっと中身が反応を示す。
潤んだ瞳は宙を泳ぎ、玉の汗が宝石のようにキラキラと
私の肌を飾っていた。そして快感のあまり手が上へ飛び、
その手先が彼等の皮膚膜を破いてしまった。
ビチャビチャッ!
私の胸やおなかの上に球体の臓器が流れ落ちる。
その臓器の隙間から何匹か細長く真っ赤な虫が現れた。
昔、お父さんに釣りに連れて行ってもらったとき見た
ゴカイという魚の餌によく似ている。
「・・・ッ痛!」
チクリとさすような痛みが胸やおなかに走った。
急いで臓器を除けて自分の体を確かめると、サッと血の気が引く。
私の薄皮一枚下に、あのゴカイモドキが入り込んで
ニュルニュルと蠢いているのだ。恐る恐る指で触ると
確かに皮膚の下にいる。それも3匹!
「ひっ、、や、やだ、、出てって、、」
ゴカイモドキは皮膚の下の肉、アバラの隙間などから、
私の中へ入っていった。この球体の幼生なのか、もしくは
取り付いていた寄生虫なのか・・・痛みこそいっさい無いものの、
ニョロニョロと動くたびに、不快感が走る。
いったい私の体はどうされてしまうのか、不安と恐怖で
いっぱいなはずなのに、子宮はもっともっと疼いて止まらない・・・。