17.ヘカトンケイル

本来生物というものは、進化の過程により
シンメトリーであることが常とされてきた。
しかし、例外もある。奇形だ。
悲劇にも特殊な理由により、通常あるべきものがなかったり、
逆に多く備わっていたり、脳や身体に重大な障害を持って
生まれてきた動物は、他の正常な同種と比べて、
淘汰される確率は遥かに高い。弱肉強食の自然界において
それはごく当たり前のことなのかもしれない・・・。
今、私の目の前にのたうち回る彼も、そんな奇形のひとり。
それは奇形の一言で片付けられないほど悲惨な姿をしていた。
頭は4つ・・・いや、頭から頭が生えているものを含めれば5つ。
目玉は飛び出したり、ひとつの目蓋の中にふたつ入っていたり、
当然視点も合わず、どこを見ているのか分からない。
胴体は捩じれ、腕や足が非対称に複数付いていた。
膝から手が出ている所もあるし、退化して使えなくなった腕もある。
頭のいたるところに口があり、涎をたれながして息を荒げていた。
「・・・う」
あまりに哀れでグロテスクな彼の容姿。私は口に手を当て目をそらす。
彼は人間の赤ん坊のような泣き声を張り上げて、涙を流していた。
そういえば子供のころ、彼によく似た神話の挿し絵を見たことがある。
それはギリシャの神で、五十の頭と百本の腕を持って生まれ、
その奇怪さゆえに親である神に地下世界へ閉じ込められてしまった
可哀想な子。決して誰にも愛されず、狂ってしまった子。
ふと振り返ると、私を犯したいのに体が言うことをきかず、
必死にもがいている彼。おどろおどろしい巨体から発する悲鳴。
私の背筋にゾクりと悪寒が走る。足がガクガクと震え、胸が
キュンと締め付けられるようなあの感覚・・・。
「あなたたちは・・・何なの?」
誰にも愛されることなく、愛することも分からず。
犯して孕ませることに執着し、それすら彼には満足にできない。
「何・・・なの・・・」
私は耳まで発熱し、つばを飲み込むと、内腿から蜜が垂れた。
生まれてきて、誰にも愛されることなく、こんな姿のまま、
何ひとつ成し遂げられず・・・死んでいくのね・・・。
耳鳴りがする。子宮が焼けるように熱い。
せめて・・・私が愛してあげなくて・・・誰が・・・。
力の入らない体でふらふらと彼に近付いていく。
もし・・・もし私が妊娠したら、彼は満足するだろうか?
あんな姿でも、生まれて来て良かったと、心の底から思うだろうか?
私が彼の赤ちゃんを産んだら、彼は救われるのだろうか・・・。
彼は私のひ弱な肢体を我武者らに引き寄せて、発育しきっていない
小さな膨らみにむしゃぶり付く。そしてうまく挿入できずにいる
ペニスを私は優しく掴んで膣中に導いた、途端にまるで狂ったように
全身をくねらせて暴れる彼。私は両足でギュッと彼の胴体を
挟み込み、抜けないように力を込めた。彼がまた悲鳴をあげる。
「だ、いじょ・・んっ!ふっ大丈夫だか、、ら、」
私の眼からも涙が溢れていた。いびつに歪んだ彼の固いおちんちんが
メチャクチャにのたうちまわって、幼い雌の奥を刺激する。
もし、もし彼の赤ちゃんが出来たら、きっと奇形児になる・・・
「赤ちゃんが、赤ちゃ、、奇形児になるぅぅっ!」
"ごびゅぅぅぅっ!!"
「ふわぁぁ、、あぁ、、あ、らめ、、らめぇ、、、
奇形児、、、奇形、、すごい、、、出てるぅぅ、、」
おちんちんが、一生懸命子宮の中に射精してる・・・。
全身をビクつかせながら絶頂した私は、意味不明の笑顔を浮かべて
のしかかって脱力しながら出し続ける彼を愛撫していた。
「手は何本かなぁ、きっと、凄い子が、、産まれよ、、、」
彼は心底安堵し至福の余韻に浸っていた。知性はなくとも本能が悟る。
彼にとって産まれて来たことは無駄ではなかったのだ。
もう不快感はない。私は彼の赤ちゃんが産みたかった。

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